地域密着型サービスの展開
1.地域密着型サービスの背景
今回の介護保険法改正のテーマは、@制度の持続可能性、A明るく活力ある超高齢社会、B社会保障の総合化であり、このために@予防を重視する、A施設の食費・居住費は自分で払う、B地域でサービスを創る、Cサービスの質を良くする、D市町村が仕事をしやすくする、E年齢問題は引き続き検討することを中心にしている。
本稿のテーマである地域密着型サービスは、B地域でサービスを創るというテーマに沿った施策であり、その背景には従前の大規模集約型の施設サービス中心の施策では高齢者自身のニーズに対応しないことと、これを支える市町村の役割も不明確であったという現状からの脱却が意図されていたものと思われる。つまり要介護者の住み慣れた地域での生活を支えるため、身近な市町村で提供されることが適当なサービス類型(地域密着型サービス)を創造することが求められたということである。
2.地域密着型サービスの種類
地域密着型サービスの特徴は、その言葉が示しているように@サービス利用の対象を、その地域の住民に限定していること、A地域単位で適正なサービス基盤の整備を行なうこと、B地域の実情に応じた指定基準や介護報酬を設定できること、C公平・公正透明な仕組みを担保するために地域住民などが直接関与することにある。
そしてここで対象となるサービスは以下の通りである。
@認知症(痴呆性)高齢者グループホーム
A認知症(痴呆性)高齢者専用デイサービス
B小規模多機能型居宅介護
C夜間対応型訪問介護
D小規模(定員30人未満)介護老人福祉施設
E小規模(定員30人未満)で介護専用型の特定施設
@認知症(痴呆性)高齢者グループホーム及びA認知症(痴呆性)高齢者専用デイサービスは、既存の仕組みの中にあったものであるが、その規模から利用者が地域に限定されることが適当なサービスであること、またD小規模(定員30人未満)介護老人福祉施設及びE小規模(定員30人未満)で介護専用型の特定施設も仕組みとしては既存の制度上にあったものであるが、その規模を減少させ、利用者を地域社会に限定したものに変更されたものである。ということは、地域密着型サービスとして新たに創設されたサービスはB 小規模多機能型居宅介護及びC夜間対応型訪問介護ということになる。
また、B小規模多機能型居宅介護のモデルはインフォーマルサービスとして先駆的にまた地道に地域で活動していた「宅老所」であるが、実施されていた多様な形態を整理して、制度として通用することや持続可能な仕組みとして整理されたものと考えられるし、C夜間対応型訪問介護についても、既存の訪問介護の中に夜間対応は存在していたが、深夜は50%増しになることや訪問回数を積み重ねる方式では利用者の負担が重くて使用できないことからの変更によるものと考えられる。
3.展開事例
高齢者総合ケアセンターこぶし園では、昭和57年に特別養護老人ホームを開設して以来在宅サービスの創設を続けており、現在では短期入所80床、365日ワイドタイム型通所介護9ヵ所、サテライト型通所介護6ヶ所、24時間365日型訪問介護3ヶ所、夜間緊急対応型365日の訪問看護4ヶ所、3食365日型の配食サービス6ヶ所、認知症対応型共同生活介護3ヶ所などを市内の16ヶ所で運営している。
この理由は、最初に始めた大規模集約型の施設サービスでは利用者自身の生活を支えることができなかったことと、在宅で生活している要介護者の生活も支えられなかったことによるものである。
それまでの在宅サービスは、24時間365日連続する介護を提供する者がいるところへの補填的な役割でしかなく、何らかの事情で在宅介護者の連続的な介護が途切れた段階では施設・病院へ入所・入院せざるを得ない事になっていた。つまり施設の利用は望まれたものではなく、介護の連続性を失った結果であったということで、それまで培ってきた近所づきあい、友人、行きつけの馴染みのある店、見慣れた風景、そしてなによりも家族からの別離を条件に、施設で介護のみが提供されるものであったと言っても過言ではない。
そこで在宅生活の延長を支える仕組みとして、一時的に介護を丸ごと代行できる短期入所を整備し、ついで24時間365日を保障する在宅サービスを創り続けてきたのである。そして施設と同様のサービスメニューが連続して提供できる段階から、訪問介護・訪問看護・通所介護・配食サービスを基本としたサポートセンターを展開してきた。
(1)小規模多機能型居宅介護
今回の介護保険法の改正により創設された小規模多機能型居宅介護は、基本的には「通い」を中心として、要介護者の様態や希望に応じて、随時「訪問や「泊まり」を組み合わせてサービス提供することで、中重度となっても在宅での生活が継続できるように支援するものとされており、一事業所あたりの登録者は25名程度、「通い」の上限は15名程度、「泊まり」については5〜9名を上限として「通い」の利用者に限定されている。また人員配置については「通い」の利用者3人に対して職員1名+「訪問」に対応する職員1名、夜間については「泊まり」と訪問対応に2名(1名は宿直可)であり、認知症対応型共同生活介護と同様に介護支援専門員の常駐が必要となっている。
また併設の「居住」部門として、認知症対応型共同生活介護、小規模な介護専用型の特定施設、小規模介護老人福祉施設(サテライト特養等)、有床診療所による介護療養型医療施設等が考えられており、小規模多機能型居宅介護と連続的、一体的なサービス提供と職員の兼務による効果的・効率的な運営も想定されている。
当センターでは訪問介護・訪問看護・通所介護・配食を基本サービスとしたサポートセンターを展開してきたところであるが、基本となる考え方は小規模多機能型居宅介護と全く同じで、介護度を問わず、それまで暮らしてきた生活を変えることなく、連続的な支援を提供するものである。
★サポートセンター三和(2002.1.1開設、コンビニ型)
通所介護 定員15名 365日ワイドタイム型
訪問介護 24時間365日型
訪問看護 夜間緊急対応365日型
配食サービス 3食365日型
居宅介護支援事業所
認知症対応型共同生活介護 定員8名
バリアフリー住宅 4室(20u/室)
★サポートセンター関原・上除(2002.4.1開設、ネットワーク型)
<関原>
通所介護 定員26名 365日ワイドタイム型
訪問介護 24時間365日型
配食サービス 3食365日型
居宅介護支援事業所
<上除>
認知症対応型共同生活介護 定員9名
居宅介護支援事業所
ボランティアサロン
研修スペース
福祉ミニ図書館
★サポートセンター永田(2004.2.1開設、コラボレート型)
通所介護 定員26名 365日ワイドタイム型
訪問介護 24時間365日型
訪問看護 夜間緊急対応365日型
配食サービス 3食365日型
居宅介護支援事業所
在宅介護支援センター
バリアフリー住宅 8室(22.1u/室)
(2)サテライト型居住施設
当センターでは、住み慣れた地域社会から離れることなく介護生活を続けるためのシステムとしてサポートセンターを創設してきたが、昭和57年に開設した特別養護老人ホームこぶし園には依然として100名の高齢者が生活から離れた介護生活を送っていた。
そこで2004年に内閣府が募集していた構造改革特区事業として、既存の施設を地域に分散するサテライト特養の仕組みを提案したところ、同年に採択され、現在2006年3月の開設に向けて準備している。
この仕組みは2005年度までは特区事業であるが、2006年度からはサテライト型居住施設として地域密着型サービスの1つとして制度化される。
その中身は、従来の施設利用者がそれまで暮らしていた地域に定員20名以下の特別養護老人ホームを新設(建物貸与可、定員の50%まで)して、従来の施設からその地域の利用者が移動し、従来の施設は利用者の移動分の定員を減らすというもので、分散してもトータルの定員数は変わらず、生活する場所が分散するという仕組みである。
メリットは何よりも大規模施設に集約されていた利用者の暮らしが元に戻るということであるが、施設に残る利用者にも施設を運営する側にもメリットがある。
それは、従来施設の中にサテライトに移動した分の空きスペースが出現することで、この空間を活用して従来の多床室を容易に低い負担で個室化できることと、他者に建築してもらう、あるいは既存の建物の回収で同様のサービスが維持できることから、運営側の施設建て替えに対するイニシャルコストを下げることができる点である。
こぶし園では第一期事業として定員100名のうち15名分が移動し、従来の施設は定員85名に変更し減少分で12室の個室を用意する。
★サテライト型居住施設美沢(2006年3月)
特別養護老人ホーム 定員15名
短期入所生活介護 定員3名
小規模多機能型居宅介護(予定) 定員25名
配食サービス
訪問看護
(3)夜間対応型訪問介護
当センターでは訪問介護の24時間体制について平成7年より実施してきたところであるが、世田谷区とともに平成15〜16年度の2年間、国の未来志向研究プロジェクトの助成を受けて24時間の安心を保障するサービスの研究を行い、テレビ電話と映像付き携帯電話によるサポートコールを開発してきた。
この理由は、特に深夜帯を中心とする夜間体制の安心を支えることが急務であったからである。
テレビ電話のサポートコールの利点は、利用者及びサービス提供者がお互いの顔や状態を目で確認しながらの相互通信であるために、安心感や情報確認の精度が高いことに有り、またサービス提供者も待機ではなく、業務をしながら対応できることから施設の夜勤時のコール対応と同様の仕組みを地域社会で行なえるという点にある。
もちろん機械に不慣れな現状、テレビ電話の購入・維持費用など課題はあるが、前記した利点を考えると今後大いに期待できるものと確信しており、このシステムで事業を実施する予定である。
他方夜間の安心を支えるための障害は、その訪問の仕組みよりも、積み重ね方式の利用料にあったと思える。つまり従来の在宅サービスの利用料は積み重ね方式のために、24時間365日連続する介護を受け続けるためには負担が重すぎで利用できなくなり、事業者も提供できない状態であったといえる。
今回の改正により創設される夜間対応型訪問介護の基本は人口20〜30万人の都市を対象にしているが、前記の意味において定額制が採用されたことに意義があると考えている。
また小規模多機能型居宅介護サービスの利用者には定額で同様のサービスが提供されることから、当面人口規模の小さな地域では小規模多機能型居宅介護で代行することも選択肢ではないかと思われる。
4.課題と展望
地域密着型サービスは、従来の措置制度ではあまり求められていなかったマーケティング、福祉用語で言えば限定された利用者ニーズに基づくサービスである。つまりサービス提供範囲と利用者が限られているということで、市町村及び地域住民の力量が求められるものでもあるし、当然サービス量が過大の地域であれば整理が必要になる。
民間参入を促し基盤の拡大を求めた反面、あたかも自由競争のように乱立した地域では今後サービス量の調整が大きな課題として浮上することが予測されるし、利用者側にはサービスの選択範囲も限定されるという側面もある。
いずれにしても2000年にスタートした介護保険法は今回の改正で大きな方向転換の時期を迎えたということで、地域密着型サービス創設の持つ意味を真摯に受け止めなければならないし、何よりも地域密着型サービスを創りあげる主体が、次世代も含めた住民自身であることに気付かなければならない。